1996年ロシアで取材中、クマに襲われ急逝した写真家 星野道夫氏。彼の写真は、アラスカを舞台に個人の眼差しで語られている随筆であり、詩である。そこに在るのはアラスカの自然なのだが、所謂風景写真や動物写真とは違う、何かのダイナミズムを感じる。大好きな写真家の一人である。彼が見ているアラスカ(自然・アウトドアー・鮭・フライ・極北・エスキモー)に僕ももともと興味がある。なのだが・・・!写真は知っていても、彼の文章に触れたのははじめてである。フッと入った雑貨屋が面白くて見ていると、実はそこは個性的な書店で、いろいろとユニークなセレクティブブックがところ狭しと並んでいた。その中で、星野道夫氏と女優の中谷みき氏の本が”よみなさい”と語りかけたので、つい買ってしまった。僕の仕事は、どうしても空いてしまう時間がけっこうあって、ちょっと読める本があったらと思っていたのもあって偶然(人生に偶然なことなど一つもありませんとある本に書いてあった)getしてしまった。星野氏は「アラスカ」で僕の好きな写真家。中谷氏は「インド」で僕の好きな女優。星野道夫氏から読み始めてもう3冊目。ハマってしまった。彼の写真はアラスカの自然や動物などが被写体なのだが、僕はアラスカに行けばこれが見れるんだなどと思っていた事を恥っずかしく思っている。そこには彼が選んだ生き方の中で出くわした現実が写真に写っていて、それは彼の生きている証しそのものではなかったのではないか、きっとそうだと彼の本が教えてくれる。そのことは、そのまま僕の今ここに反映していく大きな原動力である。僕はアラスカを星野道夫氏によって具体的に経験し、具体的に生きている実感が、彼の文章によって確認させられる。写真も以前と違った深さや広がりを感じさせ、もう一度写真の世界に楽しく触れている。星野道夫氏は言っている。「アラスカであることもニューヨークであることも東京であることも同じことだ。」僕にはその言葉は、彼の文章に触れるまではある男のロマンスとして捉えていたのが今解かる気がする。そこには「僕は何処から来てどこに行くのか」の手がかりがあり、僕を促し、捉え、自分の今ここにしっかりと向き合うことを要求する彼のメッセージがある。彼は自分に下降しつづけることを教えてくれる。僕を生きることを教えてくれている気がする。彼の世界に是非触れてほしい。